ドラマ『良いこと悪いこと』第9話では、これまで張り巡らされてきた伏線が一気に回収され、物語は衝撃的な真相へと辿り着きました。
本記事では、物語の中心人物である瀬戸紫苑(しおん)の過去を振り返りながら、真犯人・宇都見啓の動機や行動、そして彼があえて殺さなかった人物や残された謎について考察していきます。
※本編の核心に触れるため、ネタバレが含まれますのでご注意ください。
瀬戸紫苑(しおん)の過去と悲劇
瀬戸紫苑は、幼い頃からピアノの才能を持ち、将来を期待されていた少女でした。
しかし小学5年生のとき、音楽の発表会でリコーダーの「ド」を失敗したことをきっかけに、クラスから「ドの子」と呼ばれ、執拗ないじめを受けるようになります。
耐えきれなくなった紫苑は夏休み明けに転校。
その後は表舞台から姿を消しますが、大人になってからは努力の末にピアニストとして成功し、ピアノ教室も開くまでになります。
しかし皮肉にも、過去と無関係ではいられませんでした。
高木が娘・花音を連れて紫苑のピアノ教室を訪ねたことをきっかけに、封じ込めていたトラウマが再燃。
次第にピアノが弾けなくなり、精神的に追い詰められた末、紫苑は命を絶ってしまいます。
掲示板の空白期間が示すもの
鷹里小の森の掲示板では、2002年8月末から2003年5月まで投稿が途絶えていました。
これは、紫苑の転校をきっかけに、いじめが露見することを恐れた子どもたちが沈黙した可能性、あるいはクラス内で相当深刻な出来事が起き、人間関係が一度崩壊したことを示唆しているようにも見えます。
真犯人は宇都見啓だった
一連の事件の犯人として明かされたのは、紫苑の婚約者である宇都見啓でした。
彼の動機はただ一つ――愛する人を追い詰め、自殺にまで追い込んだ過去への復讐です。
宇都見は紫苑が受けた苦しみを、自らの手で加害者たちに返していきました。
- 貧ちゃん:鍵を奪い、転落死に見せかけて殺害
- ニコちゃん:道路で突き飛ばして事故死を装う
- カンタロー:放火による殺害
- 大谷先生:いじめを黙認した教師として冷凍死
- ちょんまげ:ナイフを持っていたところを制圧し殺害
いずれの犯行も、計画性と強い憎悪が感じられるものでした。
なぜキングだけは殺さなかったのか
宇都見は高木(キング)のもとを訪れ、
「貧ちゃんもニコちゃんもカンタローも先生もちょんまげも、全員俺が殺した。お前はいつまでも悪い子でいろ」
と言い残しながら、彼を殺さずに立ち去ります。
この行動には、宇都見なりの“罰”が込められていたと考えられます。
キングは直接手を下してはいないものの、いじめの中心にいた存在。
だからこそ命を奪うのではなく、すべてを背負わせて生きさせるという選択をしたのではないでしょうか。
追悼コンサートに込められた覚悟
紫苑の追悼コンサートで、宇都見は二人の思い出の曲「カノン」を最後まで弾き切ります。
その姿は、復讐を終え、自身も裁かれる覚悟を決めた人間のようにも見えました。
実際、彼はキングに殺される未来すら受け入れていた可能性があります。
キングの手で終わることで、紫苑の苦しみと罪がすべて表に出る――それが宇都見の望んだ結末だったのかもしれません。
残された謎と共犯者の存在
ただし、宇都見は紫苑と同級生ではありません。
子ども時代の細かな出来事や「夢の話」、替え歌の存在などを知るには、内部事情に詳しい協力者がいた可能性があります。
候補として考えられるのは、卒アルを黒塗りした大谷先生、もしくは校外学習で不審な動きを見せていたトヨ。
彼らがどこまで関与していたのかは、明確には描かれていません。
この“語られない余白”こそが、『良いこと悪いこと』という作品の後味の悪さ、そして深みを生んでいる要素と言えるでしょう。
まとめ
『良いこと悪いこと』の真犯人は、瀬戸紫苑の婚約者・宇都見啓でした。
彼の犯行は単なる殺人ではなく、紫苑が受けた苦しみを可視化し、関係者全員に突きつけるための復讐だったように思えます。
そして、あえてキングを殺さなかった点は、「死よりも重い罰」を与えるための選択でした。
すべてが終わっても、誰一人として救われない――そんな結末が、この作品のタイトルを強く印象づけています。
