競馬を舞台に、「継承」と「家族の絆」を描いた早見和真さんの長編小説『ザ・ロイヤルファミリー』。2019年の刊行以来、多くの読者に“泣ける競馬小説”として支持され、2025年10月にはTBS日曜劇場でドラマ化される注目作です。
この記事では原作小説の
- あらすじ(ネタバレなし)
- 物語の核心(ネタバレあり)
- 登場人物の関係
- ラストの結末
- 読後の感想
をまとめて紹介します。
原作『ザ・ロイヤルファミリー』とは?
著者は『イノセント・デイズ』などで知られる早見和真さん。本作は、競走馬と馬主、その家族、そして馬に関わる人たちの“20年にわたるドラマ”を描いた物語です。
- 第33回 山本周五郎賞
- 2019年度 JRA賞馬事文化賞
競馬ファンはもちろん、家族小説としても評価が高い一冊です。
あらすじ(ネタバレなし)
主人公は、若き税理士・栗須栄治(クリス)。父の死をきっかけに心が折れ、仕事への情熱も失いかけていた彼は、ひょんな出会いから人生を大きく変えていくことに。
● カリスマ馬主・山王耕造との出会い
栄治が出会ったのは、人材派遣会社の社長であり競走馬オーナーでもある男・山王耕造。ワンマンで破天荒、周囲から嫌われている一方で、どこか不器用なほど情に厚い人物です。
山王は所有馬すべてに「ロイヤル」という冠名を付け、競馬に人生を燃やす男。栄治は彼に気に入られ、秘書として馬主業の世界に飛び込むことになります。
● 山王の夢──「ロイヤル」の馬で有馬記念を勝つ
山王の悲願は「自分が見立てたロイヤルの馬で、有馬記念を勝つこと」。その中心となるのが、のちに大きく成長する競走馬・ロイヤルホープでした。
栄治は山王のそばで馬主業を支えながら、“継承”というテーマの中心へ巻き込まれていきます。
登場人物(関係性をざっくり)
- 栗須栄治(クリス)…主人公。亡き父への後悔を抱えながら山王の秘書に。
- 山王耕造…ロイヤルの冠名で競走馬を持つ馬主。夢は「自分の馬でGⅠを勝つ」。
- 中条耕一…山王の“隠し子”。大学生で母を亡くし、祖母の遺言で山王と距離を置いて生きてきた青年。
- ロイヤルホープ…山王が最も期待した馬。
- ロイヤルファミリー…ロイヤルホープの子ども。物語後半の重要な存在。
ネタバレ:物語の核心(ここから注意)
● ロイヤルホープの挑戦と、山王の病
ロイヤルホープはデビュー当初こそ成功を見せますがやがて勝てない時期が続きます。山王は癌を患い余命が限られていることが判明。会社は違法派遣問題で炎上し、家庭も破綻し、すべてが崩れ始めます。
● 山王の「最後の夢」
弱った山王が栄治に語ったのは「ホープの子どもで有馬を獲ってくれ」という願い。ここから物語は次の世代へ移ります。
ロイヤルファミリーの誕生
ロイヤルホープは引退後、種牡馬として第二の人生へ。そして誕生した子どもがロイヤルファミリー。
この馬を所有するのは山王ではなく中条耕一。父の夢を継ぐ立場として競馬の世界へ足を踏み入れます。
クライマックス:有馬記念、世代を超えた戦い
ロイヤルファミリーは善戦するも、父のライバル血統の馬・ビッグホープにわずかに敗れ2着。山王は既に亡くなり、夢は届かないまま物語は本編の幕を閉じます。
原作の結末(最大ネタバレ)
本編のあとに掲載されたロイヤルファミリーの「競走成績表」。そこには──
- 大阪杯 優勝
- 天皇賞(春) 優勝
- 凱旋門賞 優勝
- ジャパンカップ 優勝
- 有馬記念 優勝
父の夢だった「有馬記念制覇」を子が叶え、馬主欄には中条耕一の名前。
血と願いは確かに受け継がれた──それが静かに提示される、感動的なラストです。
読後の感想(レビュー)
- “継承”というテーマが強烈に胸に残る
- 競馬の華やかさだけでなく、人間の影の部分も丁寧に描く
- 最後の「成績表」という静かな演出が圧倒的
競馬を知らなくても読める、家族と人生の物語として完成度の高い一冊です。
まとめ
『ザ・ロイヤルファミリー』は、競馬小説でありながら家族小説としても読める作品。山王耕造の破天荒な生き方、親子の関係、そして夢の継承の物語は深い余韻を残します。
ドラマ化でさらに注目される今、原作を手に取る価値は大いにあります。
