宇宙の約8割を占めるとされながら、その正体が長年不明だった「ダークマター(暗黒物質)」に、ついに光が当たるかもしれません。東京大学の研究チームが、NASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡のデータを解析し、ダークマターの存在を示す可能性のあるガンマ線を観測したと発表しました。
これは、100年近く続いた“宇宙最大の謎”を解き明かす一歩となるのか。今回は、「ダークマターとは何か」「なぜ今まで見つからなかったのか」そして「東京大学の最新発見」について、わかりやすく解説します。
ダークマターとは?光を放たない“見えない物質”
ダークマターとは、私たちの宇宙に大量に存在していると考えられる、光を発しない物質のことです。日本語では「暗黒物質」と呼ばれます。
この存在が提唱されたのは1930年代。スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーが、銀河団の回転速度から「見える星の質量だけでは説明できない重力」があると指摘したのが始まりです。つまり、目には見えない“何か”が銀河をつなぎとめているということです。
宇宙の大部分はダークマターでできている?
現代の宇宙論では、宇宙全体の構成は次のように考えられています。
- 通常の物質(星や惑星、人間など)…約5%
- ダークマター(暗黒物質)…約27%
- ダークエネルギー(宇宙の膨張を引き起こす未知のエネルギー)…約68%
つまり、私たちが直接見たり触れたりできる“普通の物質”は、宇宙のほんの一部にすぎないのです。
なぜ今までダークマターは見つからなかったのか
ダークマターの存在は、銀河の動きや重力レンズ効果など間接的な証拠から分かっていました。しかし、「それ自体を観測する」ことは非常に難しかったのです。
見つからなかった理由①:光とほとんど関わらない
ダークマターは光を吸収せず、反射も放射もしません。そのため、光学望遠鏡や電波望遠鏡では直接観測できないのです。文字通り“暗黒”の存在といえます。
見つからなかった理由②:他の物質と反応しにくい
ダークマターは通常の物質とほとんど相互作用しないとされています。たとえ地球を通過しても、私たちはそれを感じることすらできません。
見つからなかった理由③:未知の粒子の可能性
多くの理論では、ダークマターは「WIMP(弱く相互作用する質量のある粒子)」や「アクシオン」と呼ばれる未知の素粒子ではないかと考えられています。しかし、これらの粒子はまだ発見されておらず、その性質も不明のままです。
東京大学の研究チームが捉えた“ダークマターの証拠”
今回、東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授らの研究チームは、フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡の15年分のデータを解析し、天の川銀河を取り巻く“ハロー”領域から特徴的なガンマ線を検出しました。
銀河の外縁に潜む「ハロー」に注目
これまで多くの研究は銀河中心を観測対象としていましたが、東京大学チームは銀河全体を包み込むように存在する「ハロー」に焦点を当てました。そこに、理論上ダークマターが集中するとされていたのです。
観測されたガンマ線の正体は?
解析の結果、20ギガ電子ボルト(GeV)という非常に高いエネルギーを持つガンマ線がハロー状に広がる構造を示していることが分かりました。この分布は、理論で予測されていた“ダークマターハロー”の形状と驚くほど一致していたといいます。
もしこの観測が正しければ、WIMPが衝突・対消滅を起こした際に放たれたガンマ線である可能性が高く、「人類が初めてダークマターを見た」瞬間になるかもしれません。
今後の課題と展望
ただし、今回の成果は“確定的な発見”とはまだ言えません。戸谷教授も「他の天体領域、たとえば矮小銀河などでも同様のガンマ線が観測されることが必要」と語っています。
今後は、より高感度な観測装置(地上の大型ガンマ線望遠鏡「CTAO」など)を用いた追試や、他の国際研究チームによる独立解析が鍵となるでしょう。
ダークマター研究は宇宙の理解を変える
もしこれが真にダークマターによる信号であると確認されれば、素粒子物理学の「標準模型」を超える新しい物理の扉が開かれることになります。これは宇宙の誕生や構造形成の理解に直結する、歴史的発見になるかもしれません。
まとめ
ダークマターは、光では見えない“宇宙の影”のような存在です。東京大学の研究チームが今回捉えたガンマ線は、その正体解明に一歩近づく重要な成果といえるでしょう。
- ダークマターは光を放たない不可視の物質。
- 今まで見つからなかったのは、光と相互作用しない性質のため。
- 東京大学の解析で、理論上のダークマター分布と一致するガンマ線を発見。
- 今後の観測と検証で、宇宙の謎がさらに解き明かされる可能性がある。
100年にわたって追い求められてきた「暗黒物質」の正体が、ついに姿を現す日が近づいているのかもしれません。今後の研究から目が離せません。
